研究内容

最近の研究

寺野研究室では、「社会科学を実験科学に!」をモットーにしています。

Fields

様々な社会現象を科学的に研究するための道具(理論)を紹介します。

エージェント・ベース・シミュレーション(ABS)

コンピュータシミュレーション技法を社会システム分野に適用して、社会・経済で見られる現象を分析する。具体的には、社会・組織・個人をエージェントとして捉え、それらの相互作用を通して、ボトムアップにシステムを構成する過程と構造の性質とを精査する。 最近では、大規模エージェントに関する研究も進めている。

進化計算

マルチエージェントにおける問題解決と学習について組織科学の立場から研究する。エージェントシステムによるデータ分析、企業組織における知識管理、CADシステムへの適用などが行われている。

ex.) Multi-Agent Learning Approach to Dynamic Security Patrol Routing

詳細はIrvanの研究紹介ページを御覧ください:Irvan's page

知識システム

人工知能(機械学習、テキストマイニング)を用いて様々なデータに隠れている規則性や法則を発見し、知識伝承や予測手法の確立への橋渡しを行う。同時に、これらの結果を社会シミュレーションへの適用も行う。新しいアルゴリズムをつくる理論研究に加えて、いわゆるビッグデータを用いた実データの分析から新たな知見も得ている。
最近では、推薦システムに関する研究も進めている。ユーザの行動を分析し、その嗜好に合ったものを提案するシステムやアルゴリズムをつくっている。コンピュータを利用したサービスでは欠かせない仕組みである。

ex.) Recommender Systems Based on Doubly Structural Network

Recommendation algorithms based on doubly structural network

Recommendation algorithms based on doubly structural network In most recommender systems, there are main two entities: user and items, and three relationships: users’ relationship, item’s connection and user-item like/dislike relationship. Hence, it’s reasonable to incorporate the entities and relationships into one model ------ doubly structural network. Based on this model, my current research is developing recommendation algorithms by incorporating relevant theories such social influence theory, social impact theory and so on.


TV program recommendation framework and algorithms

TV program recommender system is one important topic and application of recommender systems. My research about TV program recommender systems are based on the concept of smart TV which is the integration of internet and Web 2.0 features into television sets and set-top boxes. The goal of the research is to propose a smart, open and novel TV program recommendation framework and develop corresponding algorithms for it.

Consumer adoption of recommender systems

With the development of E-commerce, consumer adoption of recommender systems is very important for designer and developer of recommender systems. In my research, I aim at developing an integrated model, which demonstrates what factors influence consumers’ what kind of perceptions to recommender systems and eventually lead to what kind of behaviors to recommender systems, and verifying it by user study.

Papers

  • Na Chang, Takao Terano: Recommender Systems Based on Doubly Structural Network. Proc. ICIM 2011(8th Int. Confe on Innovation & Management), pp. 975-981, 2011.

サービスサイエンス

サービスという定量化しにくい社会・経済活動を工学的なアプローチから研究する。したがって、コンピュータを使うだけでなく企業などの現場で問題の性質と範囲を明らかにし、それを解決するための方法論を考える。

学習理論の精緻化と実践

小学生から社会人まで、協調学習や体験学習の重要性が指摘されている。我々は新しい学習方法の開発と評価を行っている。 ピアレビューを用いた英作文学習法、マンガ教材によるビジネス教育、ケースに基づいたビジネスゲームの開発、そして ケースメソッドやビジネスゲームにおける評価研究を行っている。

(more)

英作文学習におけるピアリビュー活動と効果測定

作文を改善させるために学習者が相互の作文について批判的に議論し、文章の書き方を学ぶ協調学習の手法として、ピアリビュー活動がある。第一言語の作文教育だけでなく、最近では第二言語習得目的で取り入れられている。しかし、学習者の相互作用による学びの効果はあまり検証されていない。本研究では、定性的・定量的な測定を行い、英作文学習におけるピアリビュー活動の評価を行なっている。

第二言語習得においては、学習者は十分に作文の意図を伝えることが難しい。言語依存の少ない手法によってピアリビュー活動の効果を高める手法も提案している。

ナラティブ・アプローチを用いたマンガ教材の開発と学習実践

Experiential learning using MANGA textbook ビジネス環境などで実践力を修得する教育手法としてケースメソッドなどの体験学習が有用とされる。ケースメソッドとは、実際に起きた出来事(ケース)を読み解き、講師や学習者とのインタラクションによって別の見方があることに気づかせていく教育手法である。

社会人教育の事業には、1)教育機関で修得した知識が実用場面で使えない、2)現場では個別ケースに特化しすぎて、応用が利かない、という課題が挙げられる。その改善のために、Problem Based Learning (PBL) やワークプレイスラーニングなど、具体的な場面の中で教えた知識が活かせるような学習が提案されている。

ビジネス環境などの場面で直接的に実践力を修得することが推奨されてきたが、同じ場面にいても、学習者によって何が問題であるかを発見できる人とできない人がいることが現在の課題になっている。

我々は、学習者が実践力をより高めるために、教材と研修手法を開発している。具体的には、ケースメソッドによる研修手法の一つとして、マンガを使ったケース教材を作成し、この教材を使った研修を実践している。 ナラティブ・アプローチとは、読者を物語(ナラティブ)へと引き込み、ある場面において自らの持てる知識をもとに、どのように行動するかを考えさせる手法である。開発しているマンガ教材は、一般的なマンガや小説のように読める教材でありながら、教育主題や議論点を埋め込んでいる。知識を伝授する教材ではなく、また明示的に特定の知識活用を支持するものでもなく、場面に没入して自らの解を探させるように設計されている。。学習では、講師が問いを投げかけ、学習者はその問いの答えを探し、他の人に合理的に説明することを繰り返すことで、単に情報を発見していくだけでなく、状況に整合的な解釈を加える訓練を行う。

本研究は吉川厚氏と共同で進めている。

※図は、NACS2005(2005)「問題を突破するコミュニケーション」(NTTデータ)より抜粋

ケースに基づいたビジネスゲームの開発と学習実践

Learning System Toward Integration of Case Method and Business Gaming ケースとビジネスゲームの融合による意思決定学習法を提案し、その効果を検証している。。 ケースとビジネスゲームを融合させることにより、過去の事実であるケースをビジネスゲームの仮想環境上で擬似的に再現し、 学習者がリアリティ感を持ちつつプレーすることによって、学習主題のより深い理解が得られる効果が期待できる。
アサヒの「スーパードライ」開発と売上シェアトップに至るまでのゲーム「Brewery Manager」の拡張として、 それまでトップブランドであったキリンの「ラガービール」が、アサヒに逆転されるまでの経緯も体験できる「Brewery Manager2」を開発した。

体験学習における効果手法の測定と評価

幅広い世代において、学習者主体でデザインされる体験学習の有用性が言われている。しかし、体験学習は新たな知識を記憶することが目的ではない。参加者や学習者の学習体験やそのプロセスを把握し、評価する方法が求められている。

我々はケースメソッドやビジネスゲームにおける学習効果の測定手法を、様々な評価観点にもとづいて開発し、評価を行なっている。従来の評価研究は、学習者や講師へのインタビューや記述回答から定性的に分析されてきたが、我々は定量的に測り、客観的な評価指標の確立を目指している。

Papers

  • Sayuri Yoshizawa-Watanabe, Masaaki Kunigami, Satoshi Takahashi, Atsushi Yoshikawa, Takao Terano: Pictogram Network to Support English Composition Instructors. Proc. 34th Annual Cognitive Science Conference, Poster session 3-160, 2012.
  • Sayuri Yoshizawa, Takao Terano, Atsushi Yoshikawa: Assessing the Impact of Student Peer Review in Writing Instruction by Using the Normalized Compression Distance. IEEE Transactions on Professional Communication, 10.1109/TPC.2011.2172833, Vol. 55, No. 1, pp. 85-96, 2012.
  • Atsushi YOSHIKAWA, Takao TERANO: "Business Case Study Using Narrative Approach with MANGA Texts, Case Studies in Service Innovation", Two day conference, Case Studies in Service Innovation, SSMEnetUK and Centre for Service Research (2010)
  • O. KOSHIYAMA, A. YOSHIKAWA, T. TERANO: "Analyzing Learners' Behaviors in a Business Gaming Practice", Proceedings of 16th International Conference on Computers in Education, pp.381-386 (2008)
  • 越山修,國上真章,吉川厚, 寺野隆雄:  ビジネスゲーム学習者の行動プロセスの研究-改良したパフォーマンスシートを用いて-  シミュレーション&ゲーミング, Vol. 21, No. 2, pp. 86-95, 2011.
  • Hikaru Uchida, Akiko Orita , Masaaki Kunigami, Atsushi Yoshikawa, Takao Terano: "Persona Conjoint Method: Measuring Learners' Latent Understandings and the Effect of Stereotypes in Complex Business Situations", Grace Hopper Celebration of Women in Computing (GHC 2012) (Oct. 2012), Baltimore, Maryland, USA [Poster]
  • 内田瑛,折田明子,國上真章,寺野隆雄,吉川厚: 学習における気づきの変化を測る  2012年度人工知能学会全国大会(第26回)論文集, 1F2-OS-11-6, 2012.

Application (from Recent Research)

エージェント・ベース・シミュレーションや進化計算などを使った応用的な研究を紹介します。

A Unified Agent-Based Model to Analyze Organizational Deviation and Kaizen Activities

組織逸脱と組織改善を統一的に扱うエージェントベースモデルを提案した。逸脱と改善は表裏一体であり、その分岐条件を明確化した。

(more)

A Unified Agent-Based Model to Analyze Organizational Deviation and Kaizen Activities 本研究では、組織逸脱と組織改善を統一的に扱うエージェント・ベース・モデルを提案した。そして、逸脱と改善は表裏一体の組織的な現象であることを明らかにした。つまり、「悪者エージェント」がいるために企業不祥事が起こるのではなく、組織改善(カイゼン、KAIZEN)も逸脱行動も紙一重であることを主張している。

Papers

  • Tomomi Kobayashi, Satoshi Takahashi, Masayuki Kunigami, Atsushi Yoshikawa, Takao Terano: A Unified Agent-Based Model to Analyze Organizational Deviation and Kaizen Activities. in Francien Dechesne, Hiromitsu Hattori, Adriaan ter Mors, Jose Miguel Such, Danny Weyns, Frank Dignum (Eds.): Advanced Agent Technology -Proc. AAMAS 2011 Workshops-, LNAI 7068, Springer Verlag, pp. 384-395, 2012.
  • Takao Terano, Tomomi Kobayashi, Satoshi Takahashi: Is This a Good Service? - Analyzing Service Levels of Individuals and Organizations through Agent-Based Modeling. 2012 Frontier in Service Conference, Session # 269, 2012.

Analysis by Real Observation and Agent Simulation

ストアマネージャーの意思決定支援ツールとして用いられるシミュレーター(Agent-Based In-Store Simulator; ABISS)の開発を目指している。実際の小売店で得られたPOSデータやRFIDデータ等を用いて、消費者の購買行動を分析し、どのようなルールで購買しているのかを抽出する。

(more)

A Unified Agent-Based Model to Analyze Organizational Deviation and Kaizen Activities 小売店内の顧客行動を再現する顧客エージェント行動ルールを提案し、ストアマネージャーの意思決定支援ツールとして用いられるシミュレーター(ABISS)を目指している。 POSデータ、FSPデータ、RFIDデータ、POP広告データにより、「誰が、いつ、何を、いくつ、いくらで、どのように店内を移動して商品を購買したのか」を解析し、Evidence-basedのエージェント行動ルールを導く。

Papers

  • Terano, T., Kishimoto A., Takahashi, T., "Investigating Retail Sales Operations Through Agent-Based In-Store Simulator," 2009 Frontiers in Service Conference, C-2-3, p. 30, Oct. 29-Nov.1, Honolulu, 2009.
  • Kitazawa, M., Takahashi, M., Yamada, T., Yoshikawa, A., Terano, T.: How Do Customers Move in a Supermarket? -Analysis by Real Observation and Agent Simulation-. Proc. the 3rd Japan-China Joint Symposium on Information Systems, 2010, pp. 23-26, 2010.
  • Sato, F., Kitazawa, M., Yoshikawa, A., Terano, T., "Development of Agent-Based In-Store Simulator to Analyze Pedestrian Behaviors," The 4th Japan-China Joint Symposium on Information Systems (JCIS 2011), Nanchang, Jiangxi, China, pp. 31-34, April 14-16, 2011.

Family Strategies in Civil Service Examination in Imperial China

難関試験であった科挙の成功・不成功を、受験者の実際の家系図から分析した逆シミュレーション的研究である。エージェント・ベース・シミュレーションを用いて、家系の特徴・性質を調べた。

(more)

Family network Relation among knowledge and artistic cultural capital Strategies for Success!? Inverse simulation

科挙試験に成功する秘訣

中国では古くから官僚登用の試験が行われ、科挙として制度化された。科挙試験を突破するには、単なる個人の才能よりも、個人をとりまく環境が重要となった。本研究では、実際の家系図を使って成功ルールを抽出した。

逆シミュレーション

世系データと抽出したルールを使い、文化資本論に基づくモデルを立てた。このモデルの妥当性を評価するためにシミュレーションを行った。実際のプロファイル情報との差異が小さい優れたモデルのパラメータを分析し、科挙合格者を多く輩出する家系の戦略を推定した。

Papers

  • Chao Yang, Setsuya Kurahashi, Keiko Kurahashi, Isao Ono, Takao Terano, "Agent-Based Simulation on Women's Role in a Family Line on Civil Service Examination in Chinese History", Journal of Artificial Societies and Social Simulation, vol. 12, no. 25, 2009

A Doubly Structural Network Method and Analysis on the Emergence of Money

「複雑二重ネットワークモデル」を用いた応用研究の一つである。貨幣の創発は、社会構成員である個々人が持つ内部ネットワークと各人の社会的関係のネットワークの変化によって起きたことを記述している。

(more)

A Doubly Structural Network Method and Analysis on the Emergence of Money 複雑二重ネットワークモデルとは、社会ネットワークを構成する個々人の中にもう一つのネットワークを持つものを指す。ここで、個々人が持つもう一つのネットワークはモノやコンテンツの繋がりを表し、モノの繋がりであればその両者は交換可能であるものとし、コンテンツの繋がりであれば両者は関連があるものとする。すなわち、複雑二重ネットワークモデルとは、社会における主体間の取引・コミュニケーション等の動的変化を記述する手段である。

このモデルを用いて、貨幣創発のメカニズムと社会構造との関わり分析した。貨幣の創発とは、ある財が「他のあらゆる財との交換手段」という特殊な役割を獲得してしまうという現象である。このような貨幣の創発現象はエージェント社会のネットワーク構造にエージェント内部における認識のネットワーク構造の相互作用が引き起こす自己組織化現象として複雑2重ネットワークモデルによって記述し、分析することが出来る。

Papers

  • Masaaki Kunigami, Masato Kobayashi, Satoru Yamadera, Takashi Yamada, Takao Terano: A Doubly Structural Network Method and Analysis on the Emergence of Money. in K. Takadama, C. Cioffi-Revilla, G. Deffuant (eds.): Simulating Interacting Agents and Social Phenomena, The Second World Congress, Springer, 2010.
  • Masaaki KUNIGAMI, Masato KOBAYASHI, Satoru YAMADERA, Takashi YAMADA, Takao TERANO,"A Doubly Structural Network Model: Bifurcation Analysis on the Emergence of Money", Evolutionary and Institutional Economics Review, Vol.7 No.1, pp.65-85, 2010. [J-STAGE]

共著者ネットワーク

論文の著者を共著関係で繋いだネットワーク.ネットワーク分析手法を用い,接続されたノード間の関係性を分析する. 共著者ネットワーク:本研究室の研究業績から作成した共著者ネットワーク.